JA通信編集部がゆく!

不動産経営支援の取り組み

2022.01.01
その他
いちじロー

執筆者

R.I
ライター歴1年目です。
美味しいものを食べるのが大好きです♪楽しく読んでいただける記事作り目指して頑張ります!
地域の人々の暮らしを豊かにし、次の世代へと安心を引き継いでいく施設を創りたい。そんな思いから生まれた「WIL-BU」について、プロジェクトの立役者であり、JA組合員でもある有限会社キューベックスの藤嶋代表にお話を伺いました。
時代に合った土地活用の ために短期間で土地を 循環させる
清田支店長(以下K):JA福岡市管内には、農業だけでなく不動産経営を営まれている組合員も多く、その相談・支援もJAの重要な役割です。藤嶋代表が手がける「WIL-BU」プロジェクトは、地域活性化と豊かな暮らしへのこだわりがつまった木造集合住宅「WIL-BU山王」からスタートしました。福岡県産木材の活用や、最新技術であるCLT工法など、画期的で前衛的な建物でした。(詳しくはJA通信vol.19参照)そして今回、また新たな施設が誕生しましたね。

藤嶋代表(以下F):この地域に求められる建物、この土地にふさわしい役割は何かと考えたとき、「医療の広場」という着想を得て、3つのクリニックと調剤薬局からなる「WIL-BUメディカルスクエア」を計画しました。「WIL-BU」は「WILL BUILDING」の意味で、次世代へ「繋ぐ」というサスティナブルな想いも込めた言葉です。
K:さまざまな分野でSDGsの取り組みが行われていますが、不動産において、藤嶋さんはどういった点が今後重要になってくると思いますか?

F:「土地を引き継ぐ」ということは単純な作業ではありません。それぞれに様々な工夫の余地があると思います。まず相続を考えて高層住宅を建築することは、節税の面では良いと思いますが、相続後の長期に渡る経営を考慮しなければ、維持管理の費用負担が増えたり、入居率維持のための改修工事が必要となります。とはいえ、いざ建て替えとなれば莫大な時間と費用を要する為、結果として物件が老朽化し負の相続財産と債務になりかねません。また今回の「WIL-BUメディカルスクエア」設計時に起きた「新型コロナウイルス感染症」や自然災害など「予測できない未来」があることも考えておかねばならないと思います。そのため、事業承継した経営者(相続人)が動きやすい環境を整えておくことも重要だと考えました。「WIL-BUメディカルスクエア」は木造建築で耐用年数は22~23年です。建物も、それを利用する人も歳を重ねて次の世代へと引き継がれていきます。「人間の営みと同じサイクルで誕生と再生を繰り返す不動産の活用計画」というイメージで考えました。
K:地域社会に寄り添う存在として、不動産が果たす役割とは何でしょうか?

F:その土地で生活する方々に、何か役に立ちたい」と考えています。
「WIL-BUメディカルスクエア」は「尽くす」という言葉を大切に計画・設計しました。不動産活用は所有者ではなく、そこで暮らす人々にとってどうあるべきか、必要なものが何かを考えるべきです。今回は用途としての医療施設であり、近隣に生活する人にとっての景観を考えました。「折り紙」のような形状の屋根に令和を象徴する「黄櫨染」という日本の伝統色を用いて、時間とともに表情を変える様子を楽しんでいただけたらと思います。

K:丁寧な建物づくりをしていくことは、スプロール化(※)を防ぎ、農業に従事する組合員の大切な土地を守ることにもつながりますよね。JAでは今後も、融資や土地活用・資産運用に関するアドバイスなど、さまざまなアプローチで組合員の事業を支援していきたいと考えています。

F:新たな事業に取り組む組合員の方が増えたり、組合員同士がつながることで地域が活性化していくことに、今回のプロジェクトがお役に立てればうれしいです。ありがとうございました。
景観に美しく溶け込むデザインと 計算されたカラーリング
折り紙のような金属屋根と外壁をデザインし、通りからの景観だけでなく、周辺の高層住宅からの見え方も強く意識。また、軒や庇をなくして屋根から壁へ連続する形状にすることで、雨水を敷地全体の勾配で受け止めている。施設全体のメインカラーは令和の祝祭を記念して黄櫨染(こうろぜん)を採用。それぞれの施設のテーマカラーには山吹色・人参色・紺青(こんじょう)色・千歳緑(ちとせみどり)といった日本の伝統色を使用し、ロゴマークやサイン、インテリアにも反映されている。
施設を見守るイチョウの木と 「1977」のオブジェ
緩勾配の屋根がリズミカルに連なる屋並、街路樹や草花、地面に根付いた自然石積みの擁壁や蛇篭(じゃかご)、統一感のあるきめ細やかなサインなどをバランスよく融合させることで、10数年先でも心地よい癒しの空間になるようにこだわった。アスファルトやコンクリート、石の舗装面のエッジは鋭利な印象になるため、グランドカバーの植物で和らげるよう配慮。また、建て替え前にあった集合住宅のラチス梁とイチョウの木を保存。この地の歴史を語る存在として今も佇んでいる。